FIP転の手続き完全ガイド|申請方法・必要書類・スムーズに進めるポイント

FIP転(FIP転換)とは、FIT(固定価格買取制度)で認定を受けている再生可能エネルギー発電所が、FIP(フィードインプレミアム制度)へ移行することを指します。

FIT制度が安定した固定価格での売電を保証する一方、FIP制度は市場価格にプレミアムが上乗せされる仕組みであり、価格変動をうまく活かせばFITより高収益を狙える可能性があります。

しかし、その一方でインバランス責任や市場価格下落リスクなど、新たな対応が求められる制度でもあります。

本記事では、FIP転の手続き方法や必要書類、スムーズに進めるための実務的ポイント、そしてよくある失敗事例まで詳しく解説します。

これからFIP制度へ移行を検討している事業者にとって、事前準備の参考となる内容です。

目次

FIP転とは?手続きの前に知っておくべき基礎知識

FIP転(FIP転換)の意味と制度概要

FIP転とは、再生可能エネルギー発電所がこれまで利用してきたFIT制度を終了し、FIP制度へ移行することです。

FIT制度では国が定めた固定価格で一定期間、電力会社が電気を買い取る義務を負い、事業者は安定した収入を得られます。

一方、FIP制度では売電価格が市場価格に連動し、その上に国が定めたプレミアム(補助金)が加算される形で収益が形成されます。

この移行は単なる制度変更ではなく、事業運営の仕組みそのものを変える大きな転換です。

市場取引への参加、発電予測の精度向上、インバランス責任の負担など、FIT時代にはなかった新たな業務やリスクが加わるため、事前に十分な理解が必要です。

FIT制度との違いとFIP制度の特徴

FIT制度は固定価格での長期買取が保証されるため、価格変動リスクがなく収支予測が立てやすいというメリットがあります。

しかし、価格が市場と切り離されているため、電力市場の需給状況に応じた柔軟な発電調整が行われにくいという課題があります。

FIP制度は市場価格に連動するため、価格が高い時期には収益を伸ばせる反面、価格下落時には収入が減少する可能性があります。

さらに、発電計画と実績の差によるインバランス料金が発生するため、計画精度の高い運用体制が求められます。

なぜ今FIP転が進められているのか

再エネ導入が進み、日本の発電構成に占める割合が高まった今、国は再エネを市場で競争できる電源へと育てることを目指しています。

固定価格のFIT制度は市場の柔軟性や競争性を阻害する可能性があるため、見直しが必要とされてきました。

また、インバランスリスクの一部を事業者が負担することで系統安定化を図る狙いもあります。

さらに、FIP制度は国の財政負担を抑えられる仕組みでもあり、制度移行の流れが加速しています。

FIP転の手続きの流れ

FIP転の手続きの流れ

ステップ1:FIP転換申請と国からの認定取得

FIP制度へ移行するには、まず国による正式な認定を受けることが不可欠です。この認定を取得しない限り、FIP制度での売電契約は成立しません。

申請は多くの場合、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)を通じて行われます。

提出する書類には、発電所の基本情報、設置場所や事業者情報、設備仕様書、過去の売電実績、今後の発電計画などが含まれます。

これらは制度の要件適合性を確認するために必要であり、記載ミスや書類の不備があると審査が遅れ、認定時期が後ろ倒しになる恐れがあります。

申請には期限が設定されており、年度ごとの制度変更により締切が早まる場合もあるため、少なくとも半年前には準備を開始し、必要に応じてアグリゲーターや専門コンサルタントにチェックを依頼するのが安全です。

認定までには数週間から数か月かかることが一般的で、特に申請が集中する時期には審査期間がさらに長引く可能性があるため、余裕を持ったスケジュール設定が求められます。

ステップ2:メーターや測定装置の整備

FIP制度の大きな特徴のひとつは、30分単位での発電計画値と実績値の提出が義務付けられている点です。

この要件を満たすためには、計測精度の高いスマートメーターやデータロガーの設置が必須となります。

FIT制度時代に使用していたメーターや監視装置は、多くの場合、FIP制度の仕様に対応していません。

そのため、制度に適合した機器への更新や追加導入が必要になります。

また、計測データは安定した通信環境を通じて送信される必要があり、山間部や通信環境の不安定な地域では専用回線やモバイル回線を確保するなどの対策が求められます。

機器の選定や設置工事には数週間から数か月を要することもあり、繁忙期には納期が遅れるケースも少なくありません。

機器の仕様確認と発注は、申請準備と並行して早めに進めることが重要です。

ステップ3:アグリゲーターとの契約

FIP制度では、発電事業者が単独で市場取引や需給調整を行うのは現実的に困難です。

そのため、多くの発電所はアグリゲーターと契約し、運用の一部または大部分を委託しています。

アグリゲーターは、電力市場での売電取引の代行、需給調整市場や容量市場への参加、発電予測の作成、インバランス対応などを一括して担い、発電所の収益を最大化する役割を果たします。

ただし、アグリゲーターによって提供サービスの範囲や手数料体系、契約条件は大きく異なります。

契約前には複数社から提案を受け、手数料率だけでなく、発電予測の精度やインバランス削減実績、市場価格が下落した際の対応力なども総合的に評価することが求められます。

また、契約期間や解約条件、追加費用の発生要件なども事前に確認しておくべきです。これらを怠ると、FIP転後の運用に大きな影響が及ぶ可能性があります。

ステップ4:運用開始後の報告義務とモニタリング

FIP制度での運用が始まると、発電計画の提出、実績の報告、インバランス発生状況の管理など、日々の運営業務が新たに発生します。

市場価格や需給状況の変化に応じて発電計画を柔軟に調整し、インバランスを最小化することが収益確保の鍵となります。

これらの業務はアグリゲーターが代行する場合が多いものの、最終的な運営責任は発電事業者にあります。

また、国や自治体への定期的な報告義務もあり、報告を怠った場合は制度上のペナルティやプレミアム単価の減額といった不利益が生じる可能性があります。

さらに、発電設備や通信環境の不具合は即座に収益へ影響するため、遠隔監視システムやアラート機能を活用し、異常時には迅速な対応を取れる体制を整えておくことが重要です。

FIP転で必要な書類と申請先

申請に必要な主な書類一覧

FIP転の申請では、発電所の設備や運営状況を正確に示すための各種書類が求められます。基本となるのは、現在の設備認定証や売電契約書、発電設備の仕様書などです。

加えて、FIP制度で義務付けられている30分単位の発電量計測に対応していることを証明するメーター適合証明書や、発電実績をまとめた記録も必要になります。

これらの書類は発電所の運営実態と制度適合性を裏付けるものであり、提出時に不備があれば審査が遅れたり、最悪の場合は再申請を求められることもあります。

そのため、事前にすべての資料を揃え、必要に応じてメーカーや施工業者から最新の証明書を取得しておくことが重要です。

SII(環境共創イニシアチブ)を通じた申請の流れ

FIP転の申請窓口として多く利用されるのが、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)です。

申請は基本的にオンラインで行い、事前に登録したアカウントを通じて必要書類をアップロードします。

書類は制度で定められた様式に沿って作成する必要があり、形式や記載方法が不適切だと差し戻しとなります。

申請後は審査が行われ、必要に応じて追加資料の提出や修正対応が求められることもあります。

審査期間は案件の混雑状況や内容の複雑さによって変わりますが、数週間から数か月かかることが一般的です。

スムーズな認定取得のためには、早めの申請と迅速な追加対応が欠かせません。

年度ごとの制度変更と最新情報の確認方法

FIP制度の運用要件や申請様式は年度ごとに変更される場合があります。

特にプレミアム単価やインバランス制度の取り扱い、提出書類のフォーマットなどは、制度開始以来複数回見直されてきました。

そのため、過去の情報や前年度の様式を流用すると要件不適合になる可能性があります。

最新情報はSIIや経済産業省の公式サイトで公表されるほか、アグリゲーターや業界団体を通じても入手可能です。

手続きに着手する前に必ず最新のガイドラインやマニュアルを確認し、制度変更に伴う準備不足を防ぐことが重要です。

FIP転で手続きをスムーズに進めるためのポイント

FIP転で手続きをスムーズに進めるためのポイント

移行スケジュールは最低6か月前から逆算

FIP転は制度の理解や書類準備に加え、設備の改修や契約の見直しなど複数の工程が必要になるため、申請期限から逆算して最低でも6か月前から準備を始めるのが理想です。

申請に必要な書類が揃わなかったり、メーター交換や通信設備の工事日程が合わなかった場合、申請が間に合わなくなる恐れがあります。

特に繁忙期には工事や機器納入のスケジュールが混み合うため、早期の計画立案が不可欠です。

機器・通信環境の仕様確認を早めに実施

FIP制度では、発電計画値と実績値を30分単位で計測し、正確に報告するための設備が求められます。

FIT時代に使用していたメーターや通信機器がそのまま使えるとは限らないため、早い段階で現状の仕様を確認し、必要に応じて交換や追加設置を行う必要があります。

通信環境についても、発電所の立地によっては安定したデータ送信が難しい場合があり、インターネット回線やモバイル通信の選定を含めた環境整備が重要です。

アグリゲーター選定は複数社比較が必須

FIP制度下では、アグリゲーターが発電所の市場取引や需給調整を代行する重要な役割を担います。

提供サービスや手数料体系は事業者によって異なり、収益性や運用のしやすさに大きく影響します。

そのため、一社だけで決めるのではなく、複数社から見積もりや提案を受け、提供サービスの範囲、インバランス対応能力、発電予測の精度、過去の運用実績などを比較することが重要です。

契約条件を丁寧に確認し、長期的なパートナーとして信頼できる事業者を選ぶことが、FIP転後の安定した運営につながります。

FIP転の手続きでよくある失敗と回避策

書類不備や期限遅れによる申請やり直し

FIP転の申請において最も多い失敗の一つが、必要書類の不備や申請期限の遅れです。

書類の一部が不足していたり、記載内容に誤りがある場合、申請は差し戻され、修正対応を求められます。

こうしたやり直しは時間を大きく消費し、結果的に申請期限に間に合わない事態を招くこともあります。

特に年度末や制度変更直前は申請が集中し、審査期間も長くなりがちです。

事前に必要書類をすべてリスト化し、内容を第三者にも確認してもらうことで、提出時のミスを防ぐことができます。

また、スケジュールは余裕を持って立て、突発的な修正依頼にも対応できる体制を整えることが重要です。

機器未対応による制度要件不適合

FIP制度では、発電計画と実績を30分単位で計測・報告できる計測機器や通信設備が必須となります。

しかし、FIT制度時代の設備ではこの要件を満たさないケースが少なくありません。

対応していないメーターや通信システムを使用していると、認定が下りないだけでなく、申請後に機器の入れ替えが必要となり、工事日程や費用面で大きな負担が発生します。

特に遠隔地や通信環境が不安定な地域では、通信方式の選定も慎重に行わなければなりません。

制度要件を満たす機器かどうかは、申請の初期段階で必ず確認し、必要であれば早めに発注と設置計画を進めることが求められます。

契約条件の見落としによる収益性低下

FIP制度では、市場取引や需給調整をアグリゲーターに委託するケースがほとんどです。

しかし、契約条件を十分に精査しないまま締結すると、予想以上に高い手数料や不利な解約条件が後から判明することがあります。

例えば、プレミアム単価が高い時期には利益を最大化できても、アグリゲーター側の取り分が大きく収益が圧迫されることもあります。

また、需給調整市場や容量市場への参加条件が限定されており、思ったように追加収益を得られない場合もあります。

契約前には複数社から条件を取り寄せ、手数料体系やサービス範囲、解約時の取り扱いまで細かく比較検討することが、長期的な利益確保につながります。

まとめ|FIP転は事前準備と情報収集が成功の鍵

FIP転は、単に制度を切り替えるだけでなく、発電事業の運営スタイルそのものを変える大きな転換点です。

制度の理解や市場価格への対応力に加え、発電予測精度の向上やインバランス管理など、これまで以上に高度な運営が求められます。

申請の段階からスムーズに進めるためには、必要書類の整備や期限管理、機器仕様の確認、アグリゲーターの適切な選定など、複数の要素を計画的に進めることが不可欠です。

また、FIP制度は年度ごとに運用ルールやプレミアム単価が変わる可能性があるため、最新情報の収集を怠らないことも重要です。

事前の準備と情報収集を徹底することで、制度移行後も安定的かつ収益性の高い発電事業を継続することができるでしょう。

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