近年、電力コストの上昇や災害時の停電リスクに備えるため、系統用蓄電池の導入が注目を集めています。
電力の需給調整やコスト削減、事業継続計画(BCP)対策として、多くの企業や自治体が導入を進めています。本記事では、電気料金の削減に成功した企業や、停電時に電力供給を確保した事例を詳しく紹介し、系統用蓄電池のメリットや活用方法を解説します。
系統用蓄電池とは?導入のメリットをおさらい
系統用蓄電池の基本概要と仕組み
系統用蓄電池は、電力網と接続し、発電量や需要に応じて電気を蓄えたり放電したりする役割を持ちます。一般的に、電力需要が少ない時間帯に蓄電し、需要が増えるピーク時に放電することで、電力供給の安定化を図ります。電力の有効活用が可能となり、エネルギー効率の向上が期待できます。
技術的には、リチウムイオン電池が主流となっていますが、大規模な電力貯蔵にはナトリウム硫黄電池(NAS電池)やフロー電池なども活用されています。蓄電池の導入により、再生可能エネルギーの出力変動を緩和し、電力の安定供給を実現することができます。
特に、太陽光や風力発電と組み合わせることで、発電量が不安定な時間帯でも安定した電力供給が可能となり、再エネの活用を促進する役割も果たします。
コスト削減につながる仕組みとは?
蓄電池の活用により、電気料金の削減が可能になります。電気料金は時間帯ごとに異なり、一般的に夜間は安く、日中のピーク時には高くなります。この仕組みを利用し、電気料金が安い時間帯に蓄電し、高騰する時間帯に放電することで、電気代の最適化が図れます。
また、系統用蓄電池は「ピークシフト」や「デマンドレスポンス」にも大きく貢献します。
- ピークシフト:電力需要が少ない時間帯に電気を蓄え、需要が増える時間帯に放電することで、ピーク時の電力使用量を抑制し、契約電力の削減につなげる。
- デマンドレスポンス:電力需要が急増した際に、電力会社からの要請に応じて蓄電池の電力を活用し、電力消費のバランスを取ることで、電力供給の安定化を図る。
このように、蓄電池を適切に活用することで、電気料金の基本料金や使用料金を削減し、企業のエネルギーコスト削減につなげることができます。また、再生可能エネルギーと組み合わせることで、自家消費率を高め、電力会社からの購入電力量を抑えることも可能になります。
停電対策としての有効性|災害時の電力確保
災害や事故による停電は、企業や公共施設にとって深刻な影響を及ぼします。特に、医療機関やデータセンター、工場などでは、短時間の停電でも大きな損失やリスクにつながる可能性があります。系統用蓄電池を導入することで、停電時に一定量の電力を確保でき、業務の継続や生活の維持に貢献します。
例えば、病院では蓄電池を活用することで、手術室や集中治療室(ICU)の電源を維持し、生命維持装置や医療機器の稼働を継続することができます。また、通信設備や監視システムのバックアップ電源としても機能し、災害時の情報共有を確保する役割も果たします。
さらに、系統用蓄電池は再生可能エネルギーと組み合わせることで、より持続可能な電力確保が可能になります。太陽光発電と連携させることで、昼間に発電した電力を蓄え、夜間や停電時に使用することができるため、長期間の電力確保が可能になります。非常時でも安定した電力供給を維持し、エネルギーの自給自足を実現することができます。
【事例①】企業の電気代削減に成功したケース

近年、電気料金の高騰が続く中、企業にとって電力コストの最適化は重要な課題となっています。系統用蓄電池を導入することで、電気料金の削減や契約電力の最適化が可能となり、多くの企業がそのメリットを享受しています。本章では、実際に蓄電池を活用し、コスト削減に成功した事例を詳しく紹介します。
大手工場が電気料金を30%削減した事例
ある大手製造工場では、電力消費のピーク時間帯に蓄電池の電力を活用することで、電気料金の大幅削減に成功しました。電気料金が安い夜間に充電し、昼間の高騰する時間帯に放電する「ピークシフト」戦略を導入したことで、電気代を30%削減。この取り組みにより、工場の年間の電力コストを大幅に抑えることができました。
さらに、工場全体のエネルギー管理システム(EMS)と蓄電池を連携させることで、より効率的な運用を実現。リアルタイムで電力消費データを分析し、無駄な電力使用を抑えることで、さらなるコスト削減を達成しました。
従来は、ピーク電力使用により高額な基本料金が発生していましたが、蓄電池を活用することで最大需要電力を抑え、基本料金の見直しにも成功しました。
オフィスビルのピークシフト運用でコストカットを実現
都心にある大規模オフィスビルでは、電力需要が集中する時間帯に蓄電池を活用し、ピーク電力を抑える運用を行いました。オフィスビルでは、空調や照明、エレベーターなど、日中の業務時間帯に電力消費が集中しがちです。このため、系統用蓄電池を導入し、電気料金が安い深夜帯に充電し、昼間の使用量を削減することで、契約電力の見直しを行いました。
この取り組みにより、基本料金の削減と電力使用量の最適化が実現し、年間を通じた電力コストの大幅な低減につながりました。また、従業員の業務環境に影響を与えることなく、照明や空調の稼働時間を調整することで、快適性を損なわずにエネルギー効率を向上させることができました。
小売業での導入事例|電力契約の最適化で節約に成功
全国展開する小売チェーンでは、複数の店舗に系統用蓄電池を導入し、電力契約の見直しを実施しました。特に、繁忙時間帯の電力使用量を分散させることで、デマンドチャージ(最大需要電力料金)の削減に成功。
従来は、夕方や週末の買い物客が増える時間帯に電力使用量が急増し、高額な電気料金が発生していましたが、蓄電池の活用によってピーク電力を抑制し、コスト削減を実現しました。
また、各店舗ごとの電力消費パターンを分析し、最適な蓄電池の運用計画を策定。AIを活用したエネルギーマネジメントシステムと連携することで、さらなる電力削減と効率的なエネルギー管理を行っています。
【事例②】災害時の停電対策に活用されたケース

近年、自然災害の頻発により、停電リスクへの対応が重要視されています。災害時に電力供給が途絶えると、事業の継続が困難になり、企業活動や公共サービスに深刻な影響を及ぼします。
そこで、系統用蓄電池を導入し、非常用電源として活用する企業や自治体が増えています。本章では、実際に停電時のバックアップ電源として蓄電池を活用した事例を紹介します。
医療施設での導入|停電時のバックアップ電源としての活用
病院や診療所では、停電時に生命維持装置や医療機器を継続的に稼働させることが求められます。ある医療施設では、蓄電池を導入し、短時間の停電時でも途切れることなく医療機器を稼働させる仕組みを構築しました。
特に、手術室や集中治療室(ICU)では、一瞬の電力供給の途絶も致命的なリスクにつながるため、蓄電池の活用により、停電時の電力供給を確保。また、長時間の停電が発生した際には、救急対応エリアの照明や通信設備の電力を確保し、患者の安全確保に貢献しました。
自治体の防災対策事例|避難所における蓄電池の活用
ある自治体では、避難所に系統用蓄電池を設置し、災害時の電力供給源として活用しました。停電時にも、照明や給水ポンプ、スマートフォンの充電が可能となり、避難者の生活環境を維持することができました。
また、太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、長期間の電力供給を可能とし、非常時でも持続可能なエネルギー供給を実現。自治体の防災力が向上し、住民の安心・安全につながる取り組みとなりました。
物流センターの停電リスク回避事例|事業継続計画(BCP)対策
大手物流企業では、災害時の業務継続を目的に蓄電池を導入しました。停電発生時には、倉庫内の自動搬送システムや冷蔵設備を維持し、物流の遅延を最小限に抑えることに成功。
特に、温度管理が必要な食品や医薬品を扱う物流センターでは、蓄電池の活用が安定した事業継続に大きく貢献。BCP対策として、蓄電池を導入することで、電力供給の途絶による損失を回避し、事業の安定運営を確保しました。
【事例③】再生可能エネルギーと組み合わせた成功事例
近年、再生可能エネルギーの普及が進む中、太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで電力の自給自足を実現し、コスト削減やエネルギーの安定供給を達成した企業が増えています。蓄電池を活用することで、発電した電力を効率的に管理し、電力会社への依存度を低減。さらに、補助金制度を活用し、導入コストを抑えた事例も多く見られます。本章では、再生可能エネルギーと蓄電池の組み合わせにより成功を収めた企業の事例を詳しく紹介します。
太陽光発電+蓄電池で電力の自給自足に成功した企業
ある製造業の企業では、工場の屋根に大規模な太陽光パネルを設置し、発電した電力を蓄電池に貯めることで、電力の自給自足を実現しました。従来は電力会社から電気を購入していましたが、昼間に発電した電気を夜間や天候不良時に使用できる仕組みを構築することで、電力会社からの購入電力量を年間50%以上削減することに成功しました。
この企業では、エネルギー管理システム(EMS)を導入し、リアルタイムで電力使用状況を監視。蓄電池の充放電を最適化することで、余剰電力の無駄を防ぎながら、安定した電力供給を実現しました。また、電力の自給自足を達成したことで、カーボンニュートラルの推進にも貢献し、環境負荷の低減にもつながっています。
さらに、余剰電力は売電することで新たな収益源を確保。この仕組みは、長期的なコスト削減だけでなく、企業の持続可能な経営にも寄与しています。
電力の安定供給を実現した工場の導入事例
ある自動車部品工場では、太陽光発電と系統用蓄電池を組み合わせることで、電力の安定供給を確保しました。特に、再生可能エネルギーの発電量は天候によって変動するため、発電量が不足する時間帯に蓄電池の電力を活用することで、生産ラインへの影響を最小限に抑えることができました。
この工場では、生産プロセスの一部が24時間稼働するため、安定した電力供給が不可欠でした。しかし、太陽光発電のみでは夜間や曇天時に十分な電力を確保することが難しいため、蓄電池を導入することで、昼間に発電した電気を蓄え、必要なときに放電するシステムを構築。電力の供給が安定し、計画的なエネルギー運用が可能となりました。
さらに、この企業では、停電時のリスク管理(BCP対策)にも蓄電池を活用。万が一の停電発生時には、蓄電池の電力を使用することで、生産設備の一部を維持し、業務の継続を確保。災害や電力供給の不安定さに対するリスクヘッジとしても、大きな効果を発揮しました。
再エネ導入補助金を活用した企業のコスト削減例
再生可能エネルギーと蓄電池の導入には、初期費用が高額になることが課題となります。しかし、政府や自治体が提供する補助金制度を活用することで、導入コストを大幅に削減できる事例が増えています。
あるオフィスビルでは、再生可能エネルギー普及促進のための補助金を活用し、太陽光発電システムと蓄電池を導入しました。補助金を適用することで、設備投資費用の40%を削減することができ、投資回収期間を短縮。通常であれば10年以上かかる投資回収期間が、補助金の活用により5年以内に回収可能な計画となりました。
また、このオフィスビルでは、余剰電力を売電することで新たな収益を確保。再生可能エネルギーによる電力供給を最大限に活用しながら、ビル全体のエネルギーコストを最適化しました。さらに、テナントに対して「グリーン電力を利用したオフィス環境」を提供することで、環境意識の高い企業に対する付加価値を向上させる効果も生まれました。
系統用蓄電池を導入する際の注意点とポイント
系統用蓄電池の導入には、コストや運用方法を慎重に検討する必要があります。適切な容量の選定や補助金の活用、長期的な運用計画を立てることで、最大限のメリットを得ることができます。ここでは、導入時の重要なポイントを紹介します。
どのくらいの容量が必要?用途別の蓄電池選定基準
蓄電池の容量は、使用目的に応じて最適なものを選ぶ必要があります。
例えば、電気料金の削減を目的とする場合は、ピーク時の電力需要をカバーできる容量を確保することが重要です。一方、停電対策として導入する場合は、最低限必要な電力(照明・通信設備・冷蔵庫など)を維持できる容量を算出し、それに適した蓄電池を選ぶことが求められます。また、再生可能エネルギーと併用する場合は、発電量や消費パターンに応じた最適な容量設計が不可欠です。
補助金・助成金を活用して導入コストを抑える方法
蓄電池の導入には高額な初期費用がかかりますが、国や自治体が提供する補助金や助成金を活用することで、コスト負担を大幅に軽減できます。
例えば、「再生可能エネルギー導入補助金」や「省エネルギー対策補助金」などがあり、これらを活用すれば、設備費の一部を補助してもらえます。申請には、事業計画の提出や一定の要件を満たす必要がありますので、事前に条件を確認し、適用可能な補助金を有効活用することがポイントです。
長期的にコストメリットを出すための運用の工夫
蓄電池を導入しただけでは、十分なコストメリットを得ることはできません。長期的な運用を考慮し、効率的なエネルギーマネジメントを行うことが重要です。
例えば、電力使用のピークシフトを行い、電気料金が高い時間帯の電力使用を抑えることで、基本料金の削減につながります。また、蓄電池の寿命を延ばすために、適切な充放電の管理を行い、無駄な負荷をかけない運用を心がけることも重要です。さらに、再生可能エネルギーと組み合わせることで、電力の自給率を高め、長期的な電気料金の低減が期待できます。
まとめ|コスト削減&停電対策に最適な系統用蓄電池の活用を!
系統用蓄電池は、電力コストの削減や停電時の電力確保といった多くのメリットをもたらします。導入事例を見ても、電気料金の最適化や事業継続の強化に成功している企業が増えており、今後もさらなる普及が期待されています。
導入を検討する際は、目的に応じた容量の選定や、補助金の活用、長期的な運用計画の策定が重要です。エネルギーの効率的な管理を実現し、持続可能な電力運用を目指しましょう。